贈与税申告誤りで相続税加算額是正、ただし贈与税控除額は是正前贈与税相当額に
相続税の暦年課税制度において、相続開始前3年(令和5年度改正後は7年)以内に贈与が行われた場合、その贈与時の価額が相続財産に加算され、相続税額の計算に影響を与えることになります。贈与税の申告書に記載された価額に誤りがあった場合には、その誤りが判明した時点での「是正後の価額」が相続財産に加算されることになります。
相続開始前の贈与において、相続財産への加算対象額は、贈与された財産の価額が基準となります。具体的には、贈与された財産の価額は、「取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるもの」とされています(相続税法第19条の1項)。
重要な点として、贈与税の増額・減額更正等の期間(除斥期間)を経過した後に贈与税の申告書に記載された価額の誤りが判明した場合でも、相続税額の計算における相続財産への加算対象額は、「是正後の価額」になるということです。つまり、除斥期間を経過してから誤りが判明した場合でも、是正後の価額が相続財産に反映されるのです。
ただし、贈与税額控除においては、「課せられた贈与税」が控除の対象となります。つまり、実際に納付した「是正前の贈与税相当額」のみが控除対象となります(相続税法第19条の1等に基づく)。
例えば、令和5年4月1日に行われた贈与に対して、贈与時の価額が600万円であり、一般税率に基づいて計算された贈与税額が82万円として申告・納付したとします。その後、贈与税の除斥期間である6年が経過した令和12年4月1日に相続が開始された際に、実際の贈与時の価額は1,000万円であり、贈与税額は231万円であったことが判明したとします。
この場合、相続財産への加算対象額は、是正後の価額である1,000万円となります。一方、贈与税額控除の対象額は、是正前の贈与税相当額である82万円となります。つまり、相続財産の評価には是正後の正確な価額が反映され、一方で贈与税額控除には実際に納付された是正前の贈与税相当額が適用されることになります。
なお、相続時精算課税においても、相続財産への加算対象額は暦年課税と同様の取り扱いとなります。
(国税庁 HP:
質疑応答事例「相続時精算課税適用財産について評価誤り等が判明した場合の相続税の課税価格に加算される財産の価額」)。