令和5年税制改正で担保提供要件見直し 国外転出時課税対象で5年間納税猶予
◆国外転出時課税制度
多くのスタートアップ企業は、国際市場への進出を目指し、海外でのビジネスチャンスを探求している。
海外進出をする際、立上げ準備等のために企業の役員や従業員等が海外に赴任するケースがよくあるが、一定の居住者が国外転出時に1億円以上の有価証券等の対象資産を所有している場合は、国外転出時課税の対象となり、対象資産の含み益に対して所得税が課税される。
◆納税猶予制度の改正
国外転出時課税制度の対象となった場合、担保の提供など一定の手続きを要件として、国外転出の日から5年間納税を猶予することができる。
これまで非上場株式等を担保に提供するためには、株券が発行されている必要があり、不発行の場合は、定款変更・株券管理等のための手続きやコストが発生し、スタートアップ企業の海外進出の弊害となってきた。
このような背景から、令和5年の税制改正により、担保提供の要件が見直された。
改正後は、納税猶予の適用を受けようとする者が、質権の設定がされていないことなど一定の要件を満たす非上場株式を担保に提供する場合には、その株式に質権設定をすることで株券不発行のままで担保として提供し、納税猶予の適用を受けることができることとなった。
(持分会社の社員の持分についても、同様の取扱いにより納税猶予の特例を適用することができる。)
株券不発行の非上場株式の担保提供は、国外転出時課税の納税猶予の手続きを大幅に簡素化し、実務負担を軽減することになった。
これにより、国外へのビジネス展開が促進されることが期待される。
役員や従業員等の国外転出時には、国外転出時課税の対象とされる場合があるため、国外転出前に税理士にご相談ください。